物語に負けた話
物語が好きです。
物語、好きですか?私は、好きです。
物語は、美だと思います。読者を飽きさせず、最後まで時間をからめ取って離さない。感情を揺さぶり、共感させ、ひとときの夢を見せる。
もし、そんな「物語」が、現実にあったら。ロマンチックってやつですね。
「美しい終わり方」、美に尽くす、そういうのっていいと思うんですよ。
本質的にお猿さんであり、増えること、栄えることしか考えない生き物が、美しい物語を生きる。それは、素敵なことだと思います。
長い長い腐れ縁に終止符を打って、ある男女が一緒になる。結構なことじゃないですか。美しい、物語ですよ。
虚構ではないということを除けば、ね。
自分は美を崇拝しています。美を保つことは文明的であり、美はより美であるように磨かれるべきだろう、と思っています。
だから、物語と自分の本能を天秤にかけたとき、自分の本能が勝つことは無かったわけです。それは自明でした。あらためて、語るまでもなかったわけです。
それが本当かどうかなんて知りませんよ。誰かがうまく断る言い訳として考えた、よくできた作り話だったかもしれません。
しかし、自分の心は折れました。美しすぎる、生ける物語が目の前に現れたので。
30歳も過ぎてしばらくの自分の心は、久々に激しく揺さぶられましたね。今でこそ、客観的にこうして文章にすることができますけれども。
空想の物語が好きです。とっぴで、まず起こりえないような架空の物語が好きです。
それは美です。